背景課題

細胞 - 存在の大いなる連鎖

約40億年前に原初の地球で生物圏の活動が始まって以来、
細胞は途切れない生存と淘汰を繰り返し、進化してきました。

言い換えると、約40億年間という時間を費やして行われてきた
地球規模でのスクリーニングの結果が、
いま私たちを構成している細胞です。

悠久のトライ&エラーを通して緻密に作り込まれた細胞は、
人類が再現困難な精密なシステムと多くの機能を持っています。

細胞で実現可能な世界

  • 再生医療

    細胞自体に治療効果を期待するモダリティであり、移植した製品自体の生着やサイトカイン産生促進によって組織再生を狙う再生医療と、疾患治療を目的とした細胞治療に分けられます。
    再生医療では、これまでの対症療法から根本治療へと、医療の質的変化が望めます。細胞治療では、特にがん治療の領域において新しい作用機序による有効性の高い治療法として期待されています。

  • 創薬支援

    医薬品の開発において細胞を活用することで、創薬過程を効率化し、成功確率を向上させることが期待されています。例えば、私たちが販売するiPS細胞由来心筋細胞について取り上げると、以下の2つがメリットとして考えられます。
    1つ目は、もし動物実験の代わりにiPS細胞由来心筋細胞で心毒性が評価できれば、動物の犠牲をなくす又は減らすことができるようになります。試験費用も動物実験と比較して安く、短い期間で結果を出すことができます。
    2つ目として、臨床試験の前に、ヒトへの外挿性に課題がある動物ではなく、実臨床と同じヒトの細胞を用いて非臨床段階で評価ができる点です。ヒト細胞を用いて評価することで、種差の問題で生じる臨床段階での開発ドロップアウトを防ぐことができれば、本来必要のなかった開発費用の節約につながります。

  • バイオ医薬品

    広くはバイオテクノロジーを使って作られる製品全般をバイオ医薬品と呼びますが、CHO細胞やハイブリドーマといった細胞や大腸菌で生産される抗体医薬品等の遺伝子組み換えタンパク質を指します。
    1980-1990年代から普及が始まり、今では多くの大手製薬企業の主力製品となっています。

  • 培養食品

    2010年以降から認知され始めた、細胞を活用した製品のなかでも比較的新しい分野です。現在の工業的畜産には、家畜に対する動物愛護、畜産に必要な大量の飼料・水の消費といった地球環境、畜産業界に従事する人たちの労働環境、食肉処理場での大腸菌・サルモネラ菌等への汚染リスクといった食の安全性等、多くの問題が指摘されています。
    これらを解決する選択肢として、ウシやニワトリ等の培養肉をはじめ、魚・エビといった魚介類の培養等、培養食品を開発する企業は世界中で数百社を数えるほど活況を呈しており、今注目されている分野です。

培地 - 細胞の夢をかなえる食事

“すべての細胞の夢はふたつの細胞になることだ” フランソワ・ジャコブ

現象としての細胞増殖の仕組みは、歴代の分子生物学者や遺伝学者たちの貢献によって随分解明されてきています。個々の細胞が”なぜ増殖したいのか"という説明は難しいのですが、実際に一つの細胞は分裂して増殖すべく常に空腹で、食べ物を求めています。体外での培養環境における細胞の食事、それは培地です。
培地の中には、私たち生命の個体が食事で摂取しているアミノ酸、ビタミン・ミネラル等に加え、生体内を巡る生理活性物質としての多種多様なタンパク質が含まれています。タンパク質は細胞の増殖にとって重要な機能を果たしているため、ほとんどの培地に添加されています。しかし、多くのタンパク質は動物由来や大腸菌等から採れる組換体であるため、そのコストは他の培地成分と比べて非常に高額なものになっています。

細胞培養の現状課題

細胞を活用した製品の普及には、培地の低コスト化が重要

まずは細胞を使った製品のなかでも、再生医療に焦点を当てます。再生医療等製品の課題について語るとき、”製造コスト”は最も深刻かつ共通した課題として位置付けられます。
なかでも、細胞培養に必須となる培地のコスト、とりわけサイトカイン等の高価な培地成分は、製造スケールが上がるに従って全体の製造コストの半分以上を占めるほど膨れ上がることもあります。特に、1ロットでの製造量が多い同種製品(患者本人ではなくドナー細胞を原料として製造される製品)では、製造コスト全体のうち培地コストが占める割合が相対的に高くなりがちです。製造工程の一部を機械化する等の改良をしても、どうしても細胞の食事量(=培地量)は減らせないからです。

細胞培養の本質 - 培地だけでなく、
基材・操作法・装置...多くの要素が関連する複合的な分野

細胞培養に関係する要素は、もちろん培地だけではありません。細胞が接する培養基材、細胞をハンドリングする手技での操作法、手技での方法を模した又は手技では実施できない培養スケールや機構を実現した装置の活用(製造工程の機械化)といった要素がございます。
これらは1つの要素を変えた場合、別の要素に影響する場合もあるため、細胞培養工程を改良する際には複数の技術・要素を理解し、広い視野で課題を解決する必要があると考えられます。

細胞培養の課題解決にむけて

全行程俯瞰型での細胞培養工程の改良

マイオリッジは、培地だけでなく基材・操作法・装置のすべての分野において、化学メーカー様や機械装置メーカー様等、多種多様な周辺産業企業様に対して細胞培養のノウハウを活用したサービス提供、共同研究をこれまで実施してきました。これらの経験を基に、細胞を用いた製品の開発企業様に対して、全工程俯瞰型での細胞培養工程の提案ができる点が私たちの強みの一つであると考えています。

製造の低コスト化の時期と効果

私たちは、研究の初期段階から、製造コストの低い製品を設計することが重要であると考えています。途中で原料をスイッチしますと時間とコストが余分にかかりますし、また低コストで細胞製品を製造できなければ、市販の段階になったときに企業の利益構造だけでなく医療財政圧迫の観点からも普及に支障が出ることが予想されます。